お気に入りに乱暴

「すきな子には意地悪をしたくなるんだよ」
澄んだ声で囁かれるその言葉に、俺の頬は引きつった。
 
雲雀が珍しく「すき」と言った。俺は訳もわからないままに、俺もすき、と反復した。だけど雲雀のそれは大きな嵐の前触れで、何故かなんて考える暇も無くトンファーが蛍光灯の光を反射したのはその直後のこと。「すきな子には、」と、ずっと聞いていたくなるようなきれいな声が耳元で囁いたのもちょうどそのときだった。
 
「違う?」
 
その問いに、雲雀に見つめられた俺はノーだなんて言えなかった。


(天邪鬼に5のお題より,お気に入りに乱暴:凸凹シンメトリー