あるところに、雲雀ずきんという、赤いずきんを被りトンファーを振り回す危なっかしい小さな女の子が住んでいました。雲雀ずきんちゃんは、哲矢お母さんと2人で住んでいました。 (え?草壁?ていうかなんであいつエプロン着てんの・・・・・・・・) 「い、委員長!!おばあさんの家へ届け物です!!」 「・・・・・・・・・嫌なら断れば良いのに、こんな役」 「はぁ・・・・・・・・・・」 「じゃあ面倒だけど行って来るよ」 「お気をつけて」 (赤ん坊の頼みだからやってるけど、本当なんなの、この劇は) というわけで雲雀ずきんちゃんは、あからさまに嫌そうな顔をしながらもりんごとボトルジュースの入ったかごを持ち、森2つ超えたところにあるおばあさんの家へ向かいました。1つ目の森の中を歩いていると、六道さん家の狼さんに出会いました。 「こんにちは雲雀くん!!」 (こいつはこいつで楽しそうだしむかつく)「何やってるのナッポー」 「ナッポーじゃありません、狼ですよ」 「どうでもいいけど、そこじゃま」 「ああ、そういえば劇の途中でした。雲雀くんはどこへ行くんですか?」 「おばあさんの家らしいけど、面倒だから君が行って来れば」 「遠慮します。そうだ、このあたりの花、摘んで行ったらいかがですか」 「疲れたしそうするよ」 「では僕はこれで。さようなら」 狼が去ったところで、雲雀ずきんちゃんは花をつんでみることにしました。 (・・・・・・・摘んで行ったって結局枯れるじゃないか) 摘もうとした雲雀ずきんちゃんは、すぐに面倒になってしまったので理由をつけて摘むのをやめ、 一応ぶちっと数本握りしめてすたすたと歩いていきました。 途中でおなかをすかせた雲雀ずきんちゃんは、かごの中に入っていたりんごを食べながら歩いていきました。しばらく歩いて歩いて、かごの中のりんごも空になったころに2つ目の森に入りました。するとしげみの向こうから誰かの動く音がし、さっき別れたはずの狼が出てきました。 「やや、雲雀くん!!また会いましたね」 「・・・・・・・・君、しつこい」 「仕方ないじゃないですか、これは運命ですよ、う ん め い!!」 「台本にもこんなところでナッポーに遭遇するなんてかいていないし」 「僕は台本なんて捨てましたからね」 「じゃあもう出て来なくていいよ」(赤ん坊が誘ったのかな、だとしたら彼にしては珍しい失策だ) 「いえ、僕はきっとまた雲雀くんに会いに出てきますよ、それではまた」 「消えてなくなれ」 そして狼は、なにやら楽しそうに再び去っていきました。 そしてまた雲雀ずきんちゃんはすたすたと歩いていきました。もうりんごは残っていなかったので、「こんなもの、体に悪い」とつぶやきつつもジュースを飲みながら歩いていきました。 その頃、おばあさんの家では――――――― ツナおばあさんの家へ、狼が先回りして来ていました。 狼の足はとても速かったのです。 「こんにちはボンゴレ」 「げっ、骸!!じゃなかった、狼!!」 「今雲雀くんがこちらへ向かっています、では僕は君と契約を」 「け、契約?!違うでしょ、俺はそこの物置に隠れとくって話じゃ・・・!!」 「僕の台本は既に捨ててしまいました、ゆえに僕は好き勝手動きます」 「そんなー!!!!!」(なんでリボーンも骸なんか誘ったんだよー!!) 結局、狼はおばあさんと契約を交わして体をのっとってしまいました。 そして自分の体は物置に隠しておきました。 「クフフフフ・・・・あとは雲雀くんを待つのみです!!」 狼は楽しそうにベッドへもぐりこみました。 雲雀ずきんちゃんが歩いていくと、何とか森を抜け、おばあさんの家へ着きました。当然ですがかごの中のりんごやジュースは、あとかたもなく消え去っています。少し考えて、雲雀ずきんちゃんはそのかごを森の中へ投げ捨てました。最初から届け物なんて無かったことにしよう。そうすることにしたのです。なんてずる賢い雲雀ずきんちゃん。 ごんっめきっどかっ ノック代わり、雲雀ずきんちゃんのトンファー攻撃!! (おばあさんの家の扉にヒビが入った!!) 「ああ、雲雀ずきんちゃん、来てくれたの」 「感謝してよね。ああそうだ、花も摘んできたけど枯れてしまったよ」 「じゃあ水にさしてそこに飾っておいて」 「嫌だよ面倒くさい。それで結局、おばあさんの役は誰がやってる訳」 おばあさんはゴホンと咳払いをひとつ。そしてクフ、と小さく笑いました。 (クフ?・・・・まさかあいつが・・・・・・・まさか、ね) 「誰か、って?ボンゴレですよ」 「草食動物かい?でも沢田は自分のことをそんな風に言わないよ」 「あ!!しくじりました」 「おまえ・・・・・・・・またナッポーか」(こいつ本当しつこい!!) 「ばれたものは仕方が無い、では雲雀くんとも契約してしまいましょう」 「嫌だ」 「な!」 「・・・・・・・ところで猟師はまだ来ない訳」(いい加減このやりとりにも飽きてきたよ) 「違うでしょう猟師は赤ずきんが狼に食べられてから来るって話です」 「君は台本を捨てたんだから関係ないだろう」 言い合いが始まろうとしていた、そのときでした。おばあさんの家の、ヒビの入った扉が勢いよく開き、その勢いで扉ははずれて砂ぼこりが巻き上げられました。少し早いですが猟師が駆けつけてくれたようです。ここまでで一番派手な登場の仕方です。余程目立ちたかったらしいです。 「ほら、猟師が来たじゃないか」(で?誰なの) 「僕はもう少しこの雲雀くんとのやりとりを楽しみたかったのに・・・・」 「・・・・・・・・・」 「一体全体誰なんですか!!顔を見せなさい!!」 もくもくとしていた砂ぼこりが段々と薄れはじめました。 そしてそこにいたのは・・・・・・・・・・ 「おう、雲雀!!助けに来てやったぞ!!」 「・・・・・・・・・・は?」 砂ぼこりの向こうから現れたのは、まさかまさかの了平でした。 その意外さに、物置に忘れ去られたツナおばあさんも思わずツッコミを入れています。 「よし、雲雀は大丈夫そうだな、良かった!!」 信じられないと言う顔で猟師を見ている雲雀ずきんちゃんと狼をよそに、猟師はひとりガオオと安心しています。 「それで何だ、沢田もいると聞いて来たのだが、奴はどこにいる!!」 「・・・・・・・・・・笹川?」 「・・・・・・・・・・てっきり山本武が来るものだと思っていましたが」 「・・・・・・・・・・ワオ、僕も珍しくナッポーと同意見だ」 「沢田はどこだー!!!!どこにいるー!!!!!」 狼と契約しているおばあさんの体には見向きもしません。笹川家にも超直感があるのでしょうか、イーピンを女の子だと判断した京子ちゃんと同じく、そういう勘は鋭いようです。 「はあ・・・・・・・・・一気に萎えたね、僕は帰らせてもらうよ」 雲雀ずきんちゃんは、衣装を脱ぎ捨てて元の学ラン姿になりました。 「僕も、奴の目前で雲雀くんを奪うのを楽しみにしていたのですが」 「君はそんなことを考えていたのか」 「当然です」 「もう咬み殺す気も起きないよ」 「おや、それは残念ですね」 「本当に訳がわからない、全く」(山本も来ないんじゃ意味が無いよ) そう言って雲雀ずきんちゃんが扉のない玄関を出ようとしたときです。聞きなれた声がしました。 「お、雲雀」 「なに・・・・・・・て、何で君が」 山本が猟師の衣装を身に付けながら走ってきました。 どういうことだと目を白黒させる雲雀ずきんちゃんとおばあさんの体の狼を見て、笑いました。 「部活が長引きそうだったからさ、笹川の兄さんに代役頼んでたんだ」 「来たか山本!!それで沢田が見えないのだが奴はどこだ!!」 「え?ツナ・・・・・・・・・・あ、確か物置に隠れてるって言ってた気が」 「ここかー!!!!」 一気に開いた物置には、いい加減疲れ果てた狼の姿のおばあさんがいました。おばあさんの体をのっとっていた狼は、憑依を解き、物置でほこりを被っていた服をぱんぱんとはたきました。 「失敗、ですかね」 狼は、クフ、と残念そうに笑いました。 「まさか最後の最後に山本武が来るとは・・・・・・・このままいけば僕と雲雀くんのハッピーエンドが待ってい」「何言ってんの」 がすっとトンファーの直撃を食らった狼は、ひどいです雲雀くんと叫びながらおばあさんの家を走り去りました。どこまでも不運な狼です。 「お待たせ、雲雀」 「遅すぎるよ君」 本物の猟師はにこりと笑って走り出し、雲雀ずきんちゃんはトンファーを振り回して猟師を追いかけていったのでした。めでたしめでたし。 めでたくなーい!!(byツナ) |