Are'nt you?

「あっ」
すてん、かしゃん!!
「いたい・・・・・・・・・・・」
 
どくろちゃんは、またこけてしまいました。
学校帰り、銭湯帰りと、いつも同じところでけつまづきます。
 
 
足元にはられている細い紐は、犬が仕掛けたものでした。その先にはがらくたの山があり、倒れこむと崩れて大きな音が響きます。「変な奴が来たとき、ここで転ぶからすぐ分かるびょん!!」外して欲しいと頼んでも、そう言うばかりで聞き入れてくれません。千種も「外しなよ」と一応言ってはくれます。しかし、「うっせー!!このくされメガネが!!」と犬が騒ぎ出すので、すぐに「めんどい・・・」と読書に戻ってしまうのです。
 
だからどくろちゃんは今日も、暗い黒曜ヘルシーランド跡でひざを抱えてすり傷を見ています。
 
 
「お、帰ってきたびょん」
かしゃん、という音を聞いて犬がゲーム機から顔を上げました。
 
「犬、いい加減あれ外せば良いのに」
「いーんじゃないれすか、だってあいつ、たらいまとか言わねーもん」
「言ってるよ」
「それはここで言ってるんらから!!たらいまはふつー玄関で言うもんれしょーが!!」
「・・・・・・・・・・・玄関」
「あそこが玄関なんらって!!」
「・・・・・・・・・・」
「音が聞こえたら、あの女が帰ってきたんらって分かるびょん!!」
 
犬の言う "玄関" でうつむいていたどくろちゃんは、2人の声をきいて、はっと顔を上げました。決して温かくなどない家庭で育ってきたどくろちゃん。彼女は、今一緒に住んでいる犬、千種がはじめての本当の家族なのだ、と思いました。優しく接してくれる訳じゃないけれど、自分の帰りを待っていてくれる人がいるということがこんなに嬉しいだなんて。
 
 
「ただいま・・・」
「おせーびょん!!」
「こら、犬」
 
どくろちゃんが使っている部屋の一角には、今日も麦チョコ一袋とミネラルウォーターが置いてありました。どくろちゃんは、それらをそっとかばんにしまいました。これが明日の食料です。
 
そして犬と千種がこちらを見ていないのを確かめると、
「犬、千種、・・・・・・・・ありがと」
 
2人の背中に向かってそっと呟きました。


(You two are good friends,aren't you?:哀婉)